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家に籠る時間が増えてしまって、まぁ友人と約束がある時などは街にも行くのですが、そうでなければ癒しを求めて公園でボーッ、の昨今でございます。

でもたまには街を一人歩きするの、いいもんですね。

 

というのも昨日、打ち合わせがあり新宿に赴いたのです。

打ち合わせ終了後は一人でプラプラ。と言っても主に本屋さん。

新宿のメガ本屋では、長時間たたずんでいるとその情報量の多さにクラクラしてしまいますね。

すっかり本酔いして、でも目当てのものは買って、さぁあとはドーナツと旨いブルーチーズを買って帰ろうとフラフラ歩いていた矢先、ロードレーサーに乗ったお兄さんが隣につけてきた。

「すみません。僕、絵を描いている者なんですが、10分程度で終わるので描かせてくれませんか」

え? 絵?

はぁ、いいですよ。芸術のために頑張ってる人、嫌いじゃありません。

 

ということで、ホームレス臭のきつい道端に座って描いていただきました。

お話を伺ってみると、いろんな雑誌でイラストのお仕事をなさっている方だそう。

ですからこちらも取材モードになり、すでにお仕事で絵を描いているのにこうして路上で声かけをする意味などを伺い、私は小説を書いていますと申し上げたところ、

「いいですね。挿画がやりたくって営業かけたりもしてるんですよ。使ってください(笑)」

いえいえ、そんな権限私にゃございませんから。ぺーぺーですから。

でもまぁいつかお仕事をご一緒するかもしれませんからと名刺を渡し、なぜかよみうりランドのチケットをくださいました。

鈴木海太さんという方でありました。

HPはコチラhttp://suzukikaita.com/contents/contents.htm

 

一人でプラプラしていると、往々にしてこういう出会いもあるもんです。

「書を捨てよ、町へ出よう」てなもんですか。

でも書を捨てられると我々物書きはたいへん困るので、どうか書を持って町へ出てほしいもんです。

 

余談ですが、描いてもらった後、ドーナツとブルーチーズのことはすっかり忘れておりました。

チーズに合いそうなたっかいハチミツを買ったから、ゼヒともクラッカーに乗っけて食べたかったのに……。

 

 

って、だいぶ遅いですが。

みなさま、無事に年を越せたようで何より。

どうぞ今年もよろしくお願いいたします。

 

さてワタクシ、お正月は父の隠居先に遊びに行っておりました。

今月末に、還暦を迎える父。

少し早いけれどそのお祝いに、ボケ防止の意味を込めてニンテンドーDS lite と脳トレを買って行ったのです。

さて、私を出迎えた父は顔半分がマスクに覆われ、ひどく低い「ええ声~」な声になっておりました。

曰く、

「U子(私の姉)にクリスマスにDSもらって、熱中してやってたら風邪ひいた」

 

うそやん。プレゼントかぶった!!

しかも、DSi をあげてもどうせ写真とか撮らないだろうからliteでいいや、という発想までかぶった!!

ソフトまで一緒!

かぶり三重苦です。

 

いくら姉妹だからって、ここまで同じこと考えなくても……。

たいそう悲しかったのですが、しょうがないから私が買ったDSは、自分のものにすることにしました。

正月早々、なんとも間の悪い話。

この間の悪さを、今年一杯ひきずりませんように。

 

 

 

「相談があるんや。お願い、今夜は俺に付き合ってくれ」
お願いと頭まで下げるものだから、ついつい友人の相談事とやらに乗ってしまった。
恋人とのことについてらしい。そしてその恋人も目の前にいた。
三人で飲んでたのだけど、ここじゃ何だからと友人の家に移動。すでにその時点で終電はない。
そしてその内容というのが――。

ここから先は若干性に絡むお話になるので、健やかな青少年や下ネタが苦手な方はご遠慮ください。

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点と線

| ヒト | | 9件のコメント

東京という街は、その気になればほんのちょっと袖触れ合うだけの出会いというのがたくさんある。
普通だったら、絶対に出会わないような人。交差するはずのない直線が無理矢理に捻じ曲げられて、ある一点で交わる、そんな力が、東京にはある。
それでいてアパートの隣人の顔も知らないんだから、まっこと面白い。

一応サービス業である私、ゴールデンウィークはとにかく仕事が忙しく、最終日の夜は疲れ切ってとにかく飲もう! と一人バーに繰り出した。
大勢でわいわい飲むのも好きだけど、のんびりゆっくり、大人の女気取りながら飲むのもいいもんだ。

ちょうど入ったバーのバーテンの男の子たちが、そろいもそろって若くてイケメンだったので申し分ない。
カウンターに腰掛けてゴールデンウィーク最後の夜に乾杯していると、外国人の男性がバーテンに一生懸命英語でなにかを訴えている。
どうやら飲みたいカクテルの名前が出てこないらしい。ふと私と目が合った。
「君が飲んでる、それは何だ?」
私の持ってるグラスを示してそう尋ねる。
「ジンベースのカクテルだよ」
そう答えた瞬間、彼の顔がぱぱぱぱぁぁぁっと輝いた。

「オゥ、イエス! ジントニック!!」
やたらと嬉しそうだ。親指を立てて私に向けて、テンションは最高潮。
私もなんだか嬉しくなってハイタッチ&ハグ。
そんなきっかけで、隣に座って飲むことになった。

英語がまったくダメな私、でたらめ英語と日本語交じりの会話だが、酒の席でのコミュニケーションにまったく不便はない。
人間、心意気さえあれば何となく相手にものを伝えられるもんだ。

お話をしていると彼はどうやらマレーシア人らしく、カイト(凧)のフェスティバルに参加するために来日しているらしかった。
いただいた名刺の名前からすると、中国系だ。もしかしたら華僑なのかもしれない。
しかもProfessorと書いてある。
おぉ、偉い人なんだ。見かけの陽気さと、踊りたいから音楽を変えろとバーテンにわがまま言う子供っぽさと、可愛い可愛いと私を口説く軽薄さからは想像もつかない。

だが総合的に面白いおっちゃんだったので楽しく飲めた。当初の目論見の、大人っぽくグラスを傾ける、というのとは大きく外れてしまったが……。

「明後日には、今度は北京に行かないとダメなんだ。ということで、明日ランチを一緒にいかがかな。スシをおごるよ、スシ好きなんだ、僕」
スシなんぞ私も好きだ。世の中で一番好きだ。「マ〜ジで〜?」と食いつく食いつく。
じゃあ明日連絡してくれと番号を渡し、軽いハグとほっぺにチュで別れた。飲み代は、全ておっちゃんがもってくれた。

結局翌日、おっちゃんからの電話はなかった。
酒の席での約束、期待はしていなかったが少し寂しく思った。別にスシを食いそこねたからではなく。
実際に会おうと言われたら面倒だな、と思うに違いない。やっぱり仕事が入って……なんてありもしない用事をでっち上げて断るのだろう。

相当酔っていたらしいおっちゃんは、ほんのちょっぴり隣り合って酒を交わした日本人の女の子のことなど、忘れてしまったのだろうか。
携帯の番号をメモした紙を、どこかに捨ててきてしまったのだろうか。
ほんの一瞬交差して、すぐに別々に伸びてゆく線と線。
そういう出会いも、悪くない。

きっと今頃、中国に向かって発ったころ。
行ってらっしゃい、よい旅を。

坂井希久子

2008年オール讀物新人賞受賞。小説家の端くれのそのまた端くれ。
翼広げて大空にはばたくぞ! と言いつつ、まだたまごには「ひび」くらいしか入っておりません。
それでも、小説が好き。あと、着物も好き。
どちらも奥が深いことでございます。
死ぬまでには、真髄にちょこっとばかし触れたいな。

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