美しい人
久し振りにいい映画を観た。渋谷東急Bunkamuraにて。
「美しい人」

「特ダネ」でおすぎが褒めちぎってたけど、その前から観たいと思っていたのだ。
9人の女性を主人公とする9つの物語のオムニバス。
一つの物語がだいたい10〜15分なんだけども、なんとワンシーン・ワンカット。編集なしで撮りっぱなし。
それゆえ、出演者の演技がとにかく光る光る!
じっと息を詰めて観てしまった。
珠玉の短編小説のような映画。

なんだか勝手に涙が溢れてくるんだ。
「ほら泣け、ここで泣け!」って嫌味なくらい作りこんでる映画じゃ決してないのに。
エンドロールが終わっても、なんだか涙が止まらなかった。

なんて言ったらいいのかな、漣のような映画?
それも派手なのではなく、全くの無風状態の時にちぃちゃな葉っぱが湖面にそっと触れて立てた漣、みたいな。
ささやかに、でも確実に、同心円状に拡がってって気づいたら大きな円になっちゃってるよ、こりゃどうしたもんだい?? って感じ。
分かるかな。分からないよな、これじゃ。

台詞の一つ一つがね、これまたいいんだよ。
小説の参考になりそうな会話が盛りだくさん。
DVD化されたら即買って、台詞をメモりたい。
漫然と日々を送ってしまいがちな私向きの一言は、覚えてるけどね。

「すべての出来事は、今日起こるの。明日じゃないの、今日なのよ。それをよく考えることね」

ともかく私がアレコレ言うより是非観ていただきたい。特に女性は。
そう思って新潟在住の友人にメールしたのだが、「新潟ではまだやってない」とのこと。
その他の地方でも「上映未定」になってるらしい。

コラ、何やってんねん。
こういう「いい映画」こそ、もっと普及に励めよ。
金かかってりゃいいってもんじゃないよ。制作日数長ければいいってもんじゃないよ。(ちなみに「美しい人」の制作日数は18日間らしい……)

渋谷ってぇ街は、こ汚くて、こ煩くて、じゃりんこばっかであんまり好きじゃないけども、単館上映の映画館と山村教室がある点は最高だ。

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コメント & トラックバック

私も子供ができる前は一人でちょこちょこ映画みにいってました。
それも、メジャーなものではなくミニシアターでやっているようなもの。
今、子供がいなかったら、『美しい人』きっとみにいっていただろうなぁ〜。
DVDでたらとりあえずみてみますね。

映画すごくよく見に行くんですが、
単館上映の映画館がないんですよね〜うちの近所に。
一番近いところ探してみよ〜っと。
……渋谷?

近所で思い出したのですが、
つい最近我が家の近くに大きいコインランドリ―ができました。
ついに始まるのね私の純愛小説が。

「僕、裸だけど、同じ人生を生きてくれませんか」
「逝け」
                       完

>染谷水音さん
ミニシアター系の映画っていいですよね。
派手すぎず作りこみすぎず、自然と人間を描いていたりして。
ちなみにウチの母は「東○マンガまつり」なんか観に行くの馬鹿馬鹿しい、と言って、当時四歳だった私をET(字幕版)に連れて行きました。
やっとゆっくりひらがなが読めるようになったかな〜という時だったのに…。
だから今でもETは映像を元に自分で勝手につけたストーリーで覚えてます。

>つきいちさん
単館上映の映画館も生き残り厳しくてずいぶんなくなっちゃいましたしね。
名画座みたいなの、あればいいのに。
コインランドリーの件はおめでとうございます。
裸? いいんですよ、裸のまま意中の人の胸に飛び込んでください。
くれぐれも飛び掛ってはいけませんよ。

コメントをありがとうございました。
いい映画だからこそ逆にこちらでなんとか時間をやりくりして追わなきゃいけないのは毎度のことのようで。
大阪で2週間足らずしか上映しなかった寺島しのぶの『やわらかい生活』を観逃して、そんなことを思いました。逆に火がつくんですよね、映画好きには(笑)

>kikuさんへ
同じ「kiku」だから何だかおかしなことになっちゃってますね。
でもそうですね、「いい映画」って、宣伝費も制作費も少なくってぼーっとしてると見逃しちゃう。
もうちょっと、普及させてほしいなぁ。

そそ、この映画今週の土曜日に友達と観にいってきます。
(友達も1歳児の母親なのだけれど、お互い旦那に預けて)

はじめまして。私もこの映画見ました。好きな女優さんがたくさん出てたのでうれしかったです!

>こういう「いい映画」こそ、もっと普及に励めよ。

ほんとですよね。私は飛行機のなかで偶然に見たんです(笑) それで質問なのですけど、あの手話のシーンに字幕ってついてました? スペインで見た友達がついてたって言うんですけど、私は字幕なんてあった記憶がぜんぜんないんですけど…。のめりこんで忘れてたのかな(笑) ありましたっけ?

>makoさん
ご訪問、ありがとうございます。
字幕、あったような気がするんですけど、もしかすると「なくてもあったように意味が通じる」くらいに演技がよかったのかも。
あやふやです。
やはりDVDが出たら見直さねば。

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坂井希久子

2008年オール讀物新人賞受賞。小説家の端くれのそのまた端くれ。
翼広げて大空にはばたくぞ! と言いつつ、まだたまごには「ひび」くらいしか入っておりません。
それでも、小説が好き。あと、着物も好き。
どちらも奥が深いことでございます。
死ぬまでには、真髄にちょこっとばかし触れたいな。

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