山村正夫記念小説講座の歴史と趣旨

名誉塾長 森村誠一

本教室(以下山村教室と記す)は私の畏友、故山村正夫氏が講談社フェイマススクールの小説講座講師を委嘱されたときを淵源とする。フェイマススクール休校後、山村氏個人による小説講座教室を創設、1999年、山村正夫氏の逝去後、私が名誉塾長として教室を引き継ぎ、その後、主任講師を山口十八良、新井 希を代表幹事として今日に至る。この間、フェイマススクールを含めて26年、いままでOBOG作家は篠田節子氏、鈴木輝一郎氏から、宮部みゆき氏、新津きよみ氏、羽太雄平氏、海月ルイ氏、上田秀人氏、石川能弘氏、久保田滋氏、石塚京助氏、北原双治氏、関口ふさえ氏、牧南恭子氏、矢口敦子氏、村上碧氏、吉野千帆氏、有賀 博之氏、高島哲裕氏、室井祐月氏、雨宮町子氏、松本茂樹氏、島村匠氏、三宅登茂子氏、松村比呂美氏、山内美樹子氏、井上凛氏、井上順一氏、伊吹有喜氏、坂井希久子氏、内山りょう氏、土橋章宏氏、七尾与史氏、中村柊斗氏、川奈まり子氏、成田名璃子氏、真生氏、山下歩氏、美輪和音氏、中島久枝氏、針とら氏、ささきかつお氏、角埜杞真氏、南杏子氏、白尾悠氏など、各位の錚々たる新進気鋭作家を輩出し、その歴史と実績は類を見ない。

作家志望人口は500万以上と推定され、年々増えている。文学賞は地方自治体創設のものを含めて約300、年間受賞者350人ないし500人と推定されている。近年、活字離れが危惧されているが、作家志望者は年々増加の一途をたどっている。山村教室もその歴史 と実績を踏まえて、同種カルチャー教室を圧して人気が高く、入塾希望者をウェイティングリストに載せざるを得ない場合がある。

作家を目指す動機は多様であるが、山村教室はプロ作家の養成を目的としている。文芸のジャンルとしては最も大きな読者人口を擁しているエンターテインメント系の作家の養成を主眼としている。

小説に鉄則はない。ということは、鉄則がないという鉄則もないことになる。だれが、どんな動機から、どんな小説を、どのように書こうと自由であるが、学校や養成所のように、何年で一定のポイントや単位によって卒業、合格し、資格があたえられるということもない。山村教室によって得るものも、各人によって異なる。だが、志を同じくする者が競い合い、切磋琢磨することによってプロ作家としての要求水準が見えてくるであろう。

なぜ作家を志すのか。それは自分の内面に表現したい世界を抱えているからである。これを書かなければ生まれてきた意味がないと思いつめるほど切実な願望から、生活のためや、余生の時間つぶしや、筆の遊(すさ)びの趣味に至るまで、志望動機の度合(ディグリー) は異なっても、表現したいという意欲は共通である。

山村教室の受講生はプロ作家志望が断然多く、動機も書くことを生き甲斐とするタイプが主流派である。教室の講師には、一流文芸誌の編集長出身者や、現役の 第一線編集者が受講生の習作の講評に当たる。並行して随時プロ作家を 招(よ)んで、作家の心構えや小説論を展開する。

月2回の教室における講義の後は、二次会に残り、講師やゲスト作家を囲んで懇談会を開き、小説作品や今日の文芸について意見を交換する。また年に1~2回、作家の現場として森村宅に受講生を招き、作家の仕事場を公開し、膝を交えて懇談する。これは受講生だけでなく、プロの作家として大いに刺激を得るからである。山村教室には『なにがなんでも作家になりたい』(教室OB鈴木輝一郎氏の言葉)人たちの熱気とパワーと刺激が渦巻いている。

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