「電車の駅を乗り越すくらい熱中できる小説というのは、最高ですね」
山村教室名誉塾長である森村誠一先生のお言葉である。

昨日、久し振りにそれをやってしまった。
ちょうどクライマックスに差し掛かっていたところで、ふと目の端に映る窓の外の光景がいつもと違うことに気付いた。
次いで、目的地の次の駅を告げるアナウンス。
あぁ、しまった。仕事に向かう途中だったのに。

その本というのがもうお読みになった方も多いと思うが、「容疑者?の献身」。
yougisya
直木賞受賞作品だし数々のミステリーベストテンの第一位に据えられているしやたらと絶賛されているし、じゃあ読んでみようかなとミーハー心で買ったのだったが――没頭してしまった。

お陰で仕事には遅刻。
今まで遅刻などしたことのない私が遅れたものだから、皆心配して「どうしたの」と聞いてくれたが、私ときたら、「東野圭吾がさ、すごいんだって、これが。いやぁ、まいったまいった、気付いたら新宿にいるんだよ。最高の気分やわ」などとすっかり興奮してまくしたてるものだからすっかり呆れかえられてしまったことだ。

内容に関しては、まだ読んでない方もいらっしゃるだろうから割愛。
ちなみに私は頭で物を考えられない人だから、分析力というものがない。
だから「ええもんはええ!」という立場でしか本やら映画やらを薦められない。
文庫の後ろについてる解説なんて、絶対書けないタイプだ。
そういうことは頭のいい方々に任せておけばいいと思うので、私があれこれと無理をして言う必要はあるまい。
だけども、私の身体と心が、「これはいい」という信号をビンビン出しまくるんだ。鈍い私の頭がそれに気付くくらいに。

さぶいぼ(トリハダのこと)立った。涙がにじんだ。胸がキュッと引き締まった。
「容疑者?の献身」は、そんな小説。

トリックで泣かせる小説に、初めて出会ったかもしれない。
日常性から少し外れたところを描くミステリーだからこそ、人間を描かないといけない。
泣かせるミステリーが、私は好きだ。

ちなみに私は、ミステリーは書かないし書けない。
だって、頭悪いんだもん♪

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降りる駅を寝過ごしたことはあっても、読み過ごしたことのない私です。ベッドに入っても、寝なかったことならあるけど。

ほんと、ミステリーは難しいです。数学みたい。方程式を自分で考えるような。小川洋子さんが、『博士の愛した数式』に関するインタビューで、同じようなことを言っていたような。

人間を書く、ということは良いお話の最低条件かなあ。それには、ちゃんと考えながら生きるってことが大事かな、と思ってます。はい。

>makeek
そっかぁ、私、数学が恐ろしくダメだから、それでミステリー書けないのかもしれない。
方程式なんて、学生時代丸覚えだったもの。
右脳でしか生きてないからね、困った。

おぉ!奇遇ですな。
私も今、東野氏の本読んでます。
『手紙』なる本で、近じか映画(ドラマだっけかな?)になるらしい。
まだ読んでいる途中ですが、なかなか面白いです。
彼の作品は、たまにちょこちょこ読んでおりますが、やはり理系の人間だなぁ〜と思わせるところが随所にあると思います。
(彼は理工学部出身なんですよね)

>染谷水音さん
うぅん、理系の方ゆえに東野さんの作品には惹かれてしまうのかなぁ。
どうも理系の男に弱いのです、ワタクシ。二桁の足し算引き算すら危ういほどの、救いがたい数学オンチというか数字オンチ、自分にないものを求めてしまうのでしょうね。

はじめまして、momojiriです。
「容疑者xの献身」はよかったっす。
で、私メも数学はからっきしのおバカです。
なのに、ミステリーを書いております。
なかなか成功作がかけないのは、やっぱり脳ミソの構造のせいかしらん、と思ったしだい。
下手の横好き、なんぞという言葉が浮かんだりして。
いいんだ!自分の道を信じるしかないもんね。
kiki女王の「自分大好き」パワーをいただきだあ!

>momojiriさん
わぁい、書き込みしてくれたのですね♪
プリプリのmomojiriさん、ありがとう。
でも森村先生も数学はダメだったって仰ってたような気がする。だから、か〜んけいないさ。姉さんの道はピンク色に輝いてるでしょ。突っ走ってください!

あっ!momojiriさんてFさんじゃありませんか!
(メールアドみて分かりました)
なんだか久しぶりにmomojiriさんのお名前をみて
懐かしい気持ちに・・・
なーんて、染谷水音ってペンネームだから私が誰だかわからないかなぁ〜。

山村教室に通っているkikuさんのブログだから
教室の誰かは書き込むかなぁ〜と期待していたので
ちょいと嬉しくなりカキコしちゃいました。
本文に関係なくシツレイ!!

>染谷水音さん
ふふふ、懐かしいでしょう。
とっても素敵なあのお姉さんです。

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坂井希久子

2008年オール讀物新人賞受賞。小説家の端くれのそのまた端くれ。
翼広げて大空にはばたくぞ! と言いつつ、まだたまごには「ひび」くらいしか入っておりません。
それでも、小説が好き。あと、着物も好き。
どちらも奥が深いことでございます。
死ぬまでには、真髄にちょこっとばかし触れたいな。

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