紫陽花

紫陽花は不実な花だから嫌いだと、誰かが言った。
ころころと色の変わる、移り気な花だと。
じっと雨に打たれて色を深くしてゆくこの花が、私は結構好きだ。

水滴の似合う花はだんぜん、青がいい。
青の紫陽花が濡れて色の薄いところは透けるように淡く、濃いところは匂い立つように艶めかしい。
しとしと静かに降る雨に、映える花。

同じ時期に咲くてっせんも然り。
そしてこの花の呼び名は「クレマチス」よりもだんぜん「てっせん」である。
蔓が硬くて切れないから、「鉄線」。
強く美しい花。

朝露を戴くあさがおも、やはり青がいい。
誰もが子供の頃に育てた花。観察日記をつけさせられた。
だらだら昼まで寝ているともう窄んでいる。
開いたばかりの露の浮いた花が、一番美しい。
なかなか子供泣かせな花。

関東地方はいよいよ本格的に、梅雨入り。
関西の梅雨はけっこう派手にじゃばじゃば降るけど、関東のは霧雨が音もなく降る。
噂には聞いていたけど本当なんだ、上京一年目にびっくりした。

霧雨は傘を差しても下から舞い込んでくるから鬱陶しいけど、窓を開けて何もせずにただ眺めている分には美しい。
私のアパートには物干しスペースになっているごくごく小さい庭があって、そこに紫陽花でも植えればたいそう風情のある雨見ができそうである。
ただ惜しむらくは、すぐ前が歯医者の前面ガラス張りの待合室になっていること。
窓を開けると患者たちの注目を一気に浴びる。
風流を妨げる日本の住宅事情の悲しさよ。

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小説家目指す方に対して今更失礼ですが、
kikuさんやっぱりボキャブラリィ豊かですね。
小説家には必要不可欠なんでしょうけど。
言葉が豊かだから、表現が豊かになる。
私は言葉が貧弱な分、表情は豊かです。
ブログで伝わりにくいのが残念ですが…

雨粒をためた紫陽花、風流ですね。
kikuさんの紫陽花への想い、日本住宅事情への憤り、伝わりました。

あと、画像名。
“hhhhhhhhh.jpg”
手抜き感、伝わりました。

ねえさん。
アジサイの色が変わるのは、土のせい。
アジサイ自身には決められないの。
どんなに青がいいと願っても、地面次第で赤になる。
ちょっと、哲学的ね?
本格的な入梅といった空模様。
毎日の必需品が増えて、鞄が重くなっちゃうなー。
靴も考えなきゃナー。
ロマンティックじゃないとこの、女の子の事情ですね。

>つきいちさん
ボキャブラリィ豊か?
そ、そうかな…一般的な二十代よりはマシかもしれないけど、小説家としてはマダマダです。
しかし画像名までチェックされてるとは(汗)油断大敵ですね。

>makeek

>アジサイの色が変わるのは、土のせい。

いくらなんでもそれを知らないほど無知じゃないぞぉ。馬鹿だけど。
土で色が変わる→移り気 ってことよ。
そういや花言葉にも移り気ってあったような。
傘、持ち歩くの嫌いだなぁ。
差したら楽しくなるような可愛い傘、ないかなぁ。

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坂井希久子

2008年オール讀物新人賞受賞。小説家の端くれのそのまた端くれ。
翼広げて大空にはばたくぞ! と言いつつ、まだたまごには「ひび」くらいしか入っておりません。
それでも、小説が好き。あと、着物も好き。
どちらも奥が深いことでございます。
死ぬまでには、真髄にちょこっとばかし触れたいな。

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