コインランドリーには、ドラマがある。と、思う。
きっと少し訳ありの人や、くたびれた感じの人や、一人暮らしの若者や、やたら派手な下着がドラムの中でガコンガコン言ってる水商売風のお姉さん、が、いるはずだ。

そんで、そのパンツだかブラジャーだかが一枚、貧乏学生のよれたトランクスやらシャツやらに紛れ込んじゃって、純情な青年は「あ…」と顔を赤らめたりしちゃうんだって。
それからそれから、お姉さんがちょっと悪戯っぽい微笑みで「あら、ごめんあそばせ」なんて言って、そこからその学生とお姉さんの物語が始まったりするんだ。

洗濯機のない生活を送ったことがないから、すべて想像だけど。

今日、ジム帰りに自転車で近所をブラブラしていたら、大型洗濯物用のコインランドリーを発見!
おぉ! なんて画期的な! 毛布も布団も丸洗いできる。やった、クリーニング代が浮く!

さっそく家に帰って夏物の肌かけ布団を抱えて飛び出した。
洗濯と乾燥でだいたい五十分くらい。
家に帰ってればいいのだが、ここでいかなる「ドラマ」がまき起こるやもしれん。

十七歳の家出少年が、お金の節約のために洗濯物をためにためまくって、もはやゴミ袋に詰めて、持って来るかもしれんじゃないか。
なんだかこの間からやけに十七歳にこだわっとるな、私……。

とりあえず十七歳の美少年がやって来たらいつでも飛びかかれる体勢で(どんなだ??)、読みかけの本を開く。
吉田修一著、「春、バーニーズで」。
むふふふ、うまくすれば坂井希久子著、「梅雨どき、産○道路沿い大型衣類専用コインランドリーにて」が上梓できるかもしれんぞ。
カマン、十七歳!

五十分後。
本はすっかり読み終わった。
十七歳は、それどころか男性は、来なかった。
何しろ、大型ドラムばっか並ぶコインランドリーである。
やって来たのは主婦ばかり。
洗濯物はタオルケットとかキルト地のなんかよう分からんでっかい布だとか、シーツ家族全員分(そうとう大家族みたいだ)なんぞである。

あぁぁ、そうか、そうだな。
一人暮らしの若い男の子は、そんなもんわざわざ洗わんわな……。
私の知っている一人暮らしの男の子たちで、毛布を洗ってそうな奴なんて見たことがない。
シーツですら怪しいもんだ。

大型だからいけないんだ。
「普通の」コインランドリーには、ドラマがある。
多分……。

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はじめまして! 通りすがりの者です。
kikuさんの前向きな姿勢に背中を押されて? 私もオール読物応募しちゃいました。
まだまだ駆け出しですがどうぞよろしく。

ところでコインランドリーといえば森淳一監督の「ランドリー」って映画ご存知ですか? 参考までにお勧めします。

おぉ!やっぱりkikuさんにとって17歳ってのが大事なんだね(笑)
しかし17歳は高校生。なかなか一人暮しはしておらぬのではなかろうか?(笑)
現実には遭遇しなくとも、想像しちゃいましょう!
妄想しちゃいましょう!
それが新しいストーリーの幕開けになるってなもんですよ!

そして、聞き捨てならぬ人の名が・・・
吉田修一の『春、バーニーズにて』私も読みました。
彼はホモがらみの話多いよね。
実は私、そこに惹かれていたりして☆

>人妻∞さん
おぉぉ、オールですか。
この時期だったら推理の方ですね。私はミステリィが書けない人です。すばらしいです。
人妻∞さんの作品の健闘、祈る!
映画の「コインランドリー」って、窪塚クンがパッケージになってるやつですよね。
ちょっと気になりつついまだに見てません。
見てみます。ありがとう。

>染谷水音さん
いや、別に17歳に特別な感情を抱いてるわけじゃないんですけど(笑)ランドセルさえしょってなければ私の恋愛圏内です(鬼畜!)
かといってショタコンなわけじゃなく、年上もOKですよ。
まぁ年齢だけで言うと13歳〜80歳くらいまでかな。あら、幅広い♪

吉田修一さんのゲイ文学(と、一括りにしてしまう)が好きなの、分かります〜。
「最後の息子」がとにかく大好きですもの。
ふふふ、気が合いますね♪

コインランドリー…なんとなく昭和の匂いがします。
私の住んでるところは住宅街なのでないですね。
あったら行くのにな〜。
素敵なおねぇさんこないかと、2回洗濯したりなんかして。いつもより多く回しております、みたいな。

kikuさんももう少し根気強く待てば素敵な出会いがあったかも。
まぁ、どんなに待っても13歳は来ないと思われます…。

>つきいちさん
いや、なんかやたらと新しくて大きくって、布団とか持ち運べるように駐車場もたいそう広いやたら近代的なコインランドリーでしたよ。
そっか、昭和の匂いのしそうなところだったらいい出会いもあったかもしれないのね!
で、裸はいい感じですか?

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坂井希久子

2008年オール讀物新人賞受賞。小説家の端くれのそのまた端くれ。
翼広げて大空にはばたくぞ! と言いつつ、まだたまごには「ひび」くらいしか入っておりません。
それでも、小説が好き。あと、着物も好き。
どちらも奥が深いことでございます。
死ぬまでには、真髄にちょこっとばかし触れたいな。

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