なんだかずいぶん放置しておりましたよ、このペエジ。
夏が終わる前に、と思って遊びまくってたものだから。
なぜか、青木ヶ原の樹海に行っておりました。
いつか樹海が舞台の小説を書こうと思っていて、近いうちにネイチャーガイドツアーに参加したいと思っていたのだけども、まったく予定外の時に訪れることになりました。
なんでだろ、樹海が私を呼んだのかな(こ、怖い……)。

と言っても軽装だったので、あまりハードなこともできず、樹海の中の東海自然道をぷらぷらと歩き、洞穴をいくつか見てきただけなんですがね。
今度は、もっと奥に分け入ってみたいなぁ。あ、もちろんガイドつきで。ワタクシ、まだアチラ側に行きたくはないので。

アチラ側といえば、自然道からさらに奥まったところに入っていけそうなところには「立ち入り禁止」のロープが張ってあって、コチラ側との境界ができていました。
その脇には「自殺防止呼びかけ箱」というのが設置されていて、背筋がうすら寒くなった。
整備された自然道とは違うアチラ側。それとは分からない溶岩穴がどこにあるかも知れない。
山梨出身の友人によれば、樹海に入った自殺志願者が溶岩穴に落ち込んで亡くなってしまう例は少なくないらしい。
ロープを境に明らかに世界が変る。そんな中に踏み込んでいける壊れた神経の持ち主に、「呼びかけ箱」なんて効果があるものなんだろうか。

溶岩土の上にできた森だから、木々の一本一本は案外細い。
地中深くまで分け入って行けない根っこが地表でのたくりわまって、そこにびっしり苔むしている。
じっと立って奥の方を見ていると、あの暗がりの中の静謐がひたひたと迫ってくるような感覚に囚われる。
底知れぬ恐怖と畏怖。だけども同時に、この自然の中で死んで、ゆっくりゆっくり腐ってゆくのは、森の胎内に温かく抱かれているようで少しうっとりする想像である。森に溶かされ森に同化する。火葬なんていうクリーンな方法よりもずっとまともで官能的だ。
もし私が死んだら、富士の樹海に捨ててきてください、と遺書に書いておこうか。
え、死体遺棄? 嫌ぁね、不便な世の中だわ、まったく。

磁石も利かなくなるという有名な話は、手持ちがなかったので試せず。
そうだ、と思いついて携帯を取り出してみた。
「あれ、アンテナ三本、バッチリ立ってる!」
驚いた。
「ああ、けっこう通じるんだよ、樹海って」
と、連れの者。
樹海の神秘が、三割くらい薄れてしまったことだ。

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生死の境を彷徨ってきたんですね!
もしかして境を跨いじゃって帰ってこれなくなりそうだったとか…。

私も小学生のとき、実家の近くにかなり有名な「出る」という噂の廃屋がありました。
誰も住んでいないだけの家なんだけど、そのときは明らかに、庭から先がもうすでに異界。
足を踏み入れようとしても、得体の知れない圧迫感に押し返されるような感じ。
ありゃ怖い。

>つきいちさん
私は霊感なんて微塵もないんですけど、やっぱり空気が少し違うことは肌で感じますよね。
圧迫感というのは言いえて妙だと思います。

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坂井希久子

2008年オール讀物新人賞受賞。小説家の端くれのそのまた端くれ。
翼広げて大空にはばたくぞ! と言いつつ、まだたまごには「ひび」くらいしか入っておりません。
それでも、小説が好き。あと、着物も好き。
どちらも奥が深いことでございます。
死ぬまでには、真髄にちょこっとばかし触れたいな。

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